#読書

ホームレス歌人のいた冬

前にも書いたように、私は短歌や俳句はあまりよく分かりません。 でも毛嫌いしているわけではないので、新聞の歌壇など何気なく覗くことはあります。 そして我が家は恥ずかしながら朝日新聞なので、本書で取り上げられたホームレス歌人・公田耕一氏のことは…

ダルタニャンの生涯ー史実の『三銃士』ー

ご存じ「三銃士」のダルタニャン。 https://myrtex.hatenablog.com/entry/21207559 以前ご紹介したように大好きなのですが、それが実在の人物だったという。これは読まねばなりません。まずは作者デュマが作品の序文で触れている「ダルタニャン氏の覚え書き…

困ってる人

以前から気になっていた、一部で話題の闘病記。 読んでみての感想は、なかなか複雑です。 著者自身が、検査のため一時入院した「ワンダーランド」と呼ぶ長期療養病棟で、眼にした実態に言葉をなくす心情に似通っているかも知れません。 しかし、著者は難病の…

闇の左手

以前から「ゲド戦記」について書きたいと思いながら、なかなか取りかかれないでいます。 私は作家じゃなくて作品で読む方なので同じ作家のものでも好き嫌いがあるし、極端な話、同じシリーズの続編にがっかりさせられることもあります(最近多いんですよね)…

遊星ハグルマ装置

昨年はあまり書かなかったので読んだもの溜まってるんですけど、せっかく新年1回目だから年明けてから読んだものを。 奇をてらった題名とレトロな表紙絵に惹かれて手に取ってみると、厚さの割に意外と軽い。 中味も分厚い昔風の用紙を使っていて、「空想と…

三陸海岸大津波

長らくご無沙汰してます。 東日本の震災以来も、もちろん本は読んでいるけれど、心に響くことが少なくなった気がします。 事実は小説より奇なりとか。 生半なフィクションは圧倒的な事実の前に色褪せてしまうようです。 やはり事実の重みということで、ノン…

プリンセス・トヨトミ

(震災後の)この時期に、この作を取り上げるのは正直抵抗があるんです。 でも映画が公開されるので、そうなるとまた書きそびれるので駆け込みで…。 読んだことない人も映画の宣伝でご存じでしょうが、大阪に陰の独立国があって、それは表題の豊臣家の遺児を…

東日本震災 お見舞い申し上げます

東北、関東地方を襲った巨大地震・津波、並びに甲信越地方の被災者の皆様にお見舞い申し上げます。 まだ救助の手の及ばない方が一人でも多く助かるように、消息の分からない方と一刻も早く連絡が付くように願っております。 犠牲者の冥福をお祈りします。 こ…

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

新聞で広告を見た時から読んでみたかった本です。 題名から「敗北を抱きしめて」(ジョン・ダワー著 岩波書店)の戦前版のような内容を予想していました。 読んでみて、その点は期待はずれでした。「高校生に語るー日本近現代史の最前線」と表紙にあるように…

風の歌を聴け

なんだか黒い表紙が続いちゃったので、カラフルなやつを、という理由だけで選んだ村上春樹のデビュー作。 読んだのは数ヶ月前のこと。 朝刊の地方欄に、本作の始めの方に出てくる公園(動物園ではない)の元・猿の檻が取り壊されるという記事が出ていました…

滝山コミューン 1974

少し前の新聞記事に取り上げられているのを見て、興味を持った本です。 著者の小学校時代の経験に基づいたノンフィクションのようで、序章は著者が30年ぶりに舞台となった東京都東久留米市の滝山団地を訪ねるところから始まりますが、そこに 「私が小学6…

天地明察

主人公とテーマの面白さが際立つ作品です。 江戸時代、800年ぶりの改暦を実行した渋川春海の物語。 渋川春海とその改暦事業についても、歴史教科書に1行ぐらい書いてあった気がするのですが、それがこんなにも長い年月をかけ大勢の関わった大事業とは、…

獣の奏者 Ⅲ・Ⅳ

以前紹介したファンタジーに続編が出ていました。 続編があるのなら、前に批判した点は取り消さなければと思ったのですが、完結編の後書きによると、「…〈闘蛇編〉〈王獣編〉で完結した物語でした。」と有ります。 それが佐藤多佳子さんという作家が、「もっ…

宇宙戦争

ウェルズといえばこれ、いやSFといえばこれ、という決定版。 「火星人襲来」といえば誰もが知っているでしょう。 パニック物の原型といえます。 でも実際に読んだ人は意外と少ないかも。 私も今まで読んでいませんでした。 タコのような火星人のイメージは…

モロー博士の島

最近は読むの少なくなったけど、子どもの頃はSFもよく読んでいました。 子ども向きに書き直された古典的なものが多かったけど、当時は作者のことなど気にしてなかったので、ヴェルヌとウェルズの区別も付いてませんでした。 今思い起こすと、ヴェルヌの方…

「床下の小人たち」シリーズ

前々から紹介したいと思っていたシリーズですが、この夏ジブリのアニメが公開予定で、違うイメージで定着してしまうと書き難くなるので…(それで書きそびれた物、かなりあります)。鉛筆よりも小さいけれど人間そのままの小人たちが、人間の家に住み着いて借…

出星前夜

寡作ながら重厚な歴史小説を送り出す飯嶋和一さんが、島原の乱を題材にした大佛次郎賞受賞作。 以前紹介した「黄金旅風」に、時代も場所も続いています。 続編というわけではないのですが、前作の主人公、長崎(外町)代官・末次平左衛門も登場しています。 …

松本清張の「遺言」 『神々の乱心』を読み解く

昨年が生誕100年でますます注目されている国民的大作家、松本清張。 何となく推理小説は読むけど書かないーみたいなスタンスになっちゃってるので(はっきり決めた訳じゃないんですが)、今まで取り上げたことないですが、実は清張物も結構読んでます。 …

鞍馬天狗とは何者かー大佛次郎の戦中と戦後

以前にも取り上げた国民的時代劇ヒーロー「鞍馬天狗」。 題名を見るとそのモデル探しかと思われるのですが、そうではなくて、作者大佛次郎の評伝、それも戦中戦後の思想と言動を中心とした物。 「はじめに」で著者は「大佛が軍国主義に対して批判的であった…

食べ方上手だった日本人

本は買わずに借りるという私は、他の所でもかなりケチ。 だから1ヶ月の食費9000円という節約生活の権威、魚柄仁之助さんは密かに尊敬していて、彼の本もわりと読んでいます。 でも、それは実用書の扱いで、今までここで取り上げることはありませんでし…

うらなり

ご存じ「坊ちゃん」のバリエーション。題名からお分かりのように、あの「うらなり君」、英語の古賀先生が主人公。 彼の目から見た「坊ちゃん」の事件と、その後のお話しです。時はあれから30年後、昭和9年の東京銀座。 「うらなり」こと古賀先生と、「山…

人形劇「三銃士」始まる

今日からNHKで久方ぶりの人形劇「三銃士」が始まるようです。 脚本が三谷幸喜さんということで、当たりか外れか差が大きそう。 対象が子ども中心だろうから、原作のダルタニアンの性格・行動の問題部分は当然パスして、彼は純粋な正義の熱血漢ということ…

耶馬台

題名からも分かるように、古代日本に想を取った連作。 あとがきによると、魏志倭人伝の卑弥呼を古事記・日本書紀に出てくる倭迹迹日百襲媛(やまとととびももそひめ; 作中では鳥飛女王)、その後継者、臺与(とよ)を同じく、豊鋤入媛(とよすきいりびめ)…

ハリー・ポッターと死の秘宝 ~ 予想の結果

「ハリー・ポッター」最終巻、ようやく読みました。 内容を予想したのは原作発売前で、「結果は1年ほど後」と書いたけど、翻訳が出るのが遅かったのもあって、2年経ってしまいました。 我ながら悠長~。 というわけで、ネタバレ御免で結果を検証させてもら…

始祖鳥記

「黄金旅風」を紹介した、飯島和一さんの前作。 時代は下がって、江戸は天明から文化にかけて(1785~1804)、手作りの凧で空を飛んだ男の物語。 主人公・幸吉は備前の国、児島八浜の生まれ。 海に親しみ、伊曽保物語を聞いて異国に憧れ、優れた資質…

鼓笛隊の襲来

前の「となり町戦争」では、あまり良く書かなかったのですが、ありふれた日常とあり得ない奇抜な設定の取り合わせは、やはり魅力があります。 本書は9編からなる短編集。 奇抜な着想や作者の資質は、長編より短編向きという感じです。 身も蓋もない言い方を…

インフルエンザ感染爆発 見えざる敵=ウイルスに挑む

子ども向けの本なのですが、新型インフルエンザ国内発症ということで、ノンフィクションに分類しておきます。 このシリーズは新感覚ノンフィクションと称して、写真や絵を多用して、視覚に訴えイメージを掴みやすくしているのが売りらしい。 本も薄く字も大…

黄金旅風

久々に書くのは、これまた久々に読んだ重厚な時代小説。 作者は昨年、島原の乱を題材にした「出星前夜」で大佛次郎賞を受賞。 受賞作を読みたいのですが、なかなか巡り会わず、その前日譚といってもいい本作を読んでみました。 といっても、二作に直接のつな…

高学歴ワーキングプア ー 「フリーター生産工場」としての大学院

いつの間にか「ワーキングプア」という言葉が定着しています。 朝から晩まで、毎日のように働いても生活にゆとりがない、いや、生活そのものが成り立たない。 それこそ昔なら考えられなかったことが、現代の日本社会を根底から揺さぶっています。 それでも、…

舞姫

このところ、あまり書きたい物(特にフィクション)に巡り会ってません。 または、今はまだ書けない、書く気になれないという物ばかり(http://blogs.yahoo.co.jp/myrte2005/19534115.html 参照)。 で、そういう時は、昔読んだ古典頼み。 その古典、近代日…