遊星ハグルマ装置

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昨年はあまり書かなかったので読んだもの溜まってるんですけど、せっかく新年1回目だから年明けてから読んだものを。

奇をてらった題名とレトロな表紙絵に惹かれて手に取ってみると、厚さの割に意外と軽い。 中味も分厚い昔風の用紙を使っていて、「空想と科学と、昭和の薫りと…懐かしく不思議な物語」という謳い文句へのこだわりを感じさせます。

そのコンセプトに基づいた短編小説と短歌のコラボレーション? 
直木賞作家・朱川氏の作品は読んだことなかったけど、名前は知っていました。 歌人・笹氏の方は申し訳ないけど初めて知りました。 私は現代短歌とか俳句とかあまり判らないんですね。

でも、見開きに5首ずつまとめられた一連の短歌を詠んでみると、ある種のイメージが湧く気がします。 なるほど、これは星新一らのショートショートをさらに短歌の形に縮めたようなもんじゃないか、という気がしました。 短歌というと叙景か叙情という先入観を持っていましたが、物語風の創作も有りなんですね。 笹氏は寺山修司の短歌を読んだことで作歌を始めたと紹介されていますが、寺山修司の短歌も物語風のものがありますよね(あまり読んでませんが)。
これは何も現代短歌の専売特許じゃなくて、江戸時代の狂歌、俳句、川柳にもこういうものはありました。
「鳥羽殿へ五,六騎急ぐ野分かな」「易水にねぶか流るる寒さかな」なんてのがそれですね。
笹氏の短歌によってこれらの句の位置づけも改めて判った気がしました。

で、その短歌群と続く短編小説に関連し合うところがあって、お互いに解説し合う風になっています。 ちょっと面白い趣向ですね。

朱川氏の作品も初めて読みましたが、まあ嫌いじゃないです。 ユーモアのあるものが私の好みです。
とくに急死したメタボ・ダメ主婦の母さんの前身が実は超能力を持つ退魔師だった?! という「母さんの秘密」とその続編はまだまだ続きがありそうです。 残された家族は母さんが封印していた呪術アイテムの類をゴミに出してしまうけど、そんなことしていいのかな? 魔力が解放されて騒ぎになったり(実は続編で既に起こっているのですが)、母さんが逃げてきた一族に居所がばれたりするんじゃないか? 子ども達はその能力を引き継いでいないのか? 猫又になっちゃった飼い猫ズビのその後は? といろいろ気になるので、続編が出たら読みたいかも。



「遊星ハグルマ装置」    朱川湊人笹公人作(日本経済新聞出版社)