75歳、交通誘導員 まだまだ引退できません

前に取り上げた「交通誘導員ヨレヨレ日記」の続編。 でも別の出版社からのもので、その後の新聞連載記事に加筆修正したもののようです。 前著の反響や、コロナ禍での話もあります。 前著では誘導員の仕事の紹介の比重が大きかったけれど、今回は人間模様が中…

日本史を暴く 戦国の怪物から幕末の闇まで

題名からして日本史の裏話でしょうが、戦国末期から江戸時代が対象のようです。新聞連載記事をまとめたもののようで、一区切りが短くて読みやすいです。 内容的には新聞広告や帯にもある明智光秀の途方もない才能、というのは具体的な記載が無くて期待外れな…

名探偵と海の悪魔

本作は2020年発表の作者の2作目のミステリーだそうですが、1634年バタヴィア(ジャカルタ)からアムステルダムに向かうオランダ東インド会社の帆船ザーンダム号が主な舞台。 主人公は一応、名探偵サミュエル(サミー)・ピップスの助手兼ボディーガードかつ…

あるべきやうわ

ことしの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、ちょっと期待していた明恵上人の登場は無くて残念でした。 でもEテレの「知恵泉」の北条泰時の回では、明恵上人との関りをわリと詳しく取り上げていました。 番組では明恵が御成敗(貞永)式目に直接影響を与えたかは…

「交通誘導員ヨレヨレ日記」他お仕事日記シリーズ

時々、新聞広告で見かける情けない漫画の表紙絵のお仕事日記シリーズ。 第1弾の「交通誘導員ー」から何冊か読んだ分の感想をまとめておきます。 今まで読んでいるのは他に派遣添乗員、マンション管理員、メーター検針員です。 このシリーズが当たったのは、…

翼ある歴史 図書館島異聞

架空世界、オロンドリア帝国を舞台にしたファンタジーの続編。前作の最後に少し触れられている王子の戦争の顛末が、前後の背景も含めて4人の女性を主人公に四巻の歴史として語られます。 巻の一 剣の歴史はアンダスヤ(ダスヤ)王子の従妹である女性軍人の…

図書館島

オロンドリア帝国という架空世界が舞台のファンタジー。 そこはテルカンと称される王に支配される広大な帝国で、構成する地域はそれぞれに独自の文化や言語を持っています。 主人公ジェヴィックは紅茶諸島という辺境の南の島生まれ。 描写される自然や風俗は…

エーリッヒ・ケストナー こわれた時代

とくに作家で読むことはあまりしない私ですが、エーリッヒ・ケストナーは数少ない例外の好きな作家のひとり。 といっても今まで読んでいるのは主に子ども向けの作品で、伝記や評伝も読んだことが有りません。 子どもの味方ケストナーおじさんのイメージがぐ…

通い猫アルフィーのはつ恋

通い猫アルフィーシリーズの2作目。1作目ではアルフィーの活躍で飼い主たちはみな仲良くなり、クレアとジョナサンは結婚して、ジョナサンの家がアルフィーの本宅になっています。 ポーランド人一家は自分のレストランを持ってエドガーロードを離れたけれど、…

通い猫アルフィーの奇跡

猫が好きなので読み始めたシリーズの第1作。 ロンドンで老婦人マーガレットや先輩猫アグネスと幸せに暮らしていたオス猫アルフィーは、アグネスに続いて大切な飼い主マーガレットまで失い、寄る辺ない身の上に。ただ一人の飼い主に運命を託す危険を知ったア…

魔術師ペンリックの使命

L.M.ビジョルド五神教シリーズの新作ペンリック物の続編。 前作「魔術師ペンリック」最終話から数年後、主人公ペンリックは30歳になってアドリア大神官の魔術師になっています。 前作の舞台ウィールドがドイツにあたるとすると、アドリアはイタリアらしい。 …

「鎌倉殿」に明恵上人は登場するか?

本年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、それなりに面白く見ています。 私の個人的興味の1つは、以前取り上げた「明恵 夢を生きる」(河合隼雄著) https://myrtex.hatenablog.com/entry/25361975 の明恵上人がドラマに登場するかという事。 明恵が出てき…

魔術師ペンリック

L.M.ビジョルド五神教シリーズの新作。 実は本作を一番最初に読みました。 舞台は3作目「影の王国」と同じウィールドだけど、時代はだいぶ後のようです。 そして主人公ペンリック・キン・ジュラルドはウィールド人ではなく隣接する連州出身。連州は「影の王…

影の王国

L.M.ビジョルド五神教シリーズの3作目。 場所も年代も前2作とは全く異なる森の国ウィールド。 400年前、五神教国ダルサカのアウダル大王に征服され、その150年後に復活した、13人の選帝侯に選ばれた聖王が統治する国です。 古代ウィル-ドでは氏族…

ブート・バザールの少年探偵

最初に断っておきますが、本書は題名から想像する推理物ではありません。 一応そういう体裁になっているし、インドのスラムに住む主人公の少年とその友人は、探偵活動を繰り広げるのですが、子どもならではの視点で真相に迫ったり、偶然に導かれて鮮やかに事…

影の棲む城

L・M・ビジョルドの五神教シリーズ2作目。 前作の3年後、イセーレ国姫の母イスタ国太后が本作の主人公です。 前作で影の呪詛により弟と異母兄である国主が命を落とし、イセーレが国主に、カザリルは宰相になっています。 母である藩太后も亡くなって実家の…

チャリオンの影

作者ロイス・マクマスター・ビジョルドのことは全く知りませんでしたが、1980年代にSFでデビューし、2000年代からはファンタジーも書き始めたようです。 その五神教シリーズの比較的新しいものを読んで興味を持ったので、第1作から読み直してみました。 舞…

ノラや

猫好きなら1度読んでおきたい内田百閒先生の猫随筆。 家に入り込んできた野良猫の子をそのまんまノラと名付けてかわいがっていたが、1年半ほどたった春のある日、出かけたきり帰らなくなる。 飼うようになった経緯も、いなくなることも昭和の昔なら普通にあ…

ペスト

カミュは有名だけど、全く読んだことのない作家です。 まず思い浮かべるのは「異邦人」で、なんだか不条理な作品を書く人というイメージがありました。 お恥ずかしいことですが、カフカと混同しているところもあったかもしれない。 でも今この時期、「災禍の…

カササギ殺人事件

「殺人事件」物は読んでもあまり取り上げないようにしているのですが、この作品は本とか出版について考えさせられるところが多かったので。 表題の「カササギ殺人事件」は語り手の編集者スーザンの出版社が扱う人気シリーズの新作ミステリー。 上巻はこの作…

星夜航行

ずうっと放ったらかしておいて、ようやく書く気になったのは、何度か取り上げた飯嶋和一さんの作。でも書く気になったのは、ちょっと訳ありです。 実はこの出版社、少し前に某作家を褒めようというキャンペーンをやって、一部で批判されていました。 本の感…

引っ越しました

Yahooブログからやっと引越ししました。 案ずるよりなんとやらで、やってみると意外に短時間で完了。 いや、手直ししないといけないところが色々で、まだ完了とは言えませんが…。 この機会にまた書いてみようと思うものの、手直しと、こちらの操作に慣れるま…

お礼とお知らせ

長らく投稿をさぼっていましたが、その間も大勢の皆様が見に来てくださってありがとうございます。 せっかくコメントをくださった方もいらっしゃったのに、お返事できずに申し訳ありません。この場を借りてお詫びいたします。 yahooブログがなくなるとのこと…

ホームレス歌人のいた冬

前にも書いたように、私は短歌や俳句はあまりよく分かりません。 でも毛嫌いしているわけではないので、新聞の歌壇など何気なく覗くことはあります。 そして我が家は恥ずかしながら朝日新聞なので、本書で取り上げられたホームレス歌人・公田耕一氏のことは…

ダルタニャンの生涯ー史実の『三銃士』ー

ご存じ「三銃士」のダルタニャン。 https://myrtex.hatenablog.com/entry/21207559 以前ご紹介したように大好きなのですが、それが実在の人物だったという。これは読まねばなりません。まずは作者デュマが作品の序文で触れている「ダルタニャン氏の覚え書き…

困ってる人

以前から気になっていた、一部で話題の闘病記。 読んでみての感想は、なかなか複雑です。 著者自身が、検査のため一時入院した「ワンダーランド」と呼ぶ長期療養病棟で、眼にした実態に言葉をなくす心情に似通っているかも知れません。 しかし、著者は難病の…

闇の左手

以前から「ゲド戦記」について書きたいと思いながら、なかなか取りかかれないでいます。 私は作家じゃなくて作品で読む方なので同じ作家のものでも好き嫌いがあるし、極端な話、同じシリーズの続編にがっかりさせられることもあります(最近多いんですよね)…

遊星ハグルマ装置

昨年はあまり書かなかったので読んだもの溜まってるんですけど、せっかく新年1回目だから年明けてから読んだものを。 奇をてらった題名とレトロな表紙絵に惹かれて手に取ってみると、厚さの割に意外と軽い。 中味も分厚い昔風の用紙を使っていて、「空想と…

三陸海岸大津波

長らくご無沙汰してます。 東日本の震災以来も、もちろん本は読んでいるけれど、心に響くことが少なくなった気がします。 事実は小説より奇なりとか。 生半なフィクションは圧倒的な事実の前に色褪せてしまうようです。 やはり事実の重みということで、ノン…

プリンセス・トヨトミ

(震災後の)この時期に、この作を取り上げるのは正直抵抗があるんです。 でも映画が公開されるので、そうなるとまた書きそびれるので駆け込みで…。 読んだことない人も映画の宣伝でご存じでしょうが、大阪に陰の独立国があって、それは表題の豊臣家の遺児を…