日本史を暴く 戦国の怪物から幕末の闇まで

題名からして日本史の裏話でしょうが、戦国末期から江戸時代が対象のようです。
新聞連載記事をまとめたもののようで、一区切りが短くて読みやすいです。

内容的には新聞広告や帯にもある明智光秀の途方もない才能、というのは具体的な記載が無くて期待外れな感じ。 信長の遺体の行方というのも、他のどこかで読んだ気がします。 江戸時代の人々の暮らしや、疫病対策などの具体的な話は面白く感じます。
総じて大きな歴史の流れにかかわる話より、著者が発掘した古文書の細々した話が、著者も気分が乗っているのか、生き生きして興味深く感じました。

それにしても、著者の古文書発掘の熱意と努力には感心します。 歴史研究家というのは皆そういうものなのでしょうか? いまだに古書店の店先には歴史の秘密を隠した文書が眠っているとは、素人には想像もつかない。 それを見つけ出して、短い時間で価値を見極め即決で購入する、というのもすごい能力・決断力だなと思います。 著者は古文書を新聞を読むくらいの速さで読めると豪語しておられるけれど、それぐらいできなければ無理でしょうね。
本書では、まだ素材のような話が多いですが、テーマを絞ってまとまった本が出るのを期待しています。 すでに「地震の日本史」「感染症の日本史」といった著書がおありのようで、そちらも機会があれば読みたいですが、新発掘の資料を駆使した庶民目線の歴史を見たいものです。

 

「日本史を暴く」      磯田道史著(中公新書