現代小説(日本)

遊星ハグルマ装置

昨年はあまり書かなかったので読んだもの溜まってるんですけど、せっかく新年1回目だから年明けてから読んだものを。 奇をてらった題名とレトロな表紙絵に惹かれて手に取ってみると、厚さの割に意外と軽い。 中味も分厚い昔風の用紙を使っていて、「空想と…

プリンセス・トヨトミ

(震災後の)この時期に、この作を取り上げるのは正直抵抗があるんです。 でも映画が公開されるので、そうなるとまた書きそびれるので駆け込みで…。 読んだことない人も映画の宣伝でご存じでしょうが、大阪に陰の独立国があって、それは表題の豊臣家の遺児を…

風の歌を聴け

なんだか黒い表紙が続いちゃったので、カラフルなやつを、という理由だけで選んだ村上春樹のデビュー作。 読んだのは数ヶ月前のこと。 朝刊の地方欄に、本作の始めの方に出てくる公園(動物園ではない)の元・猿の檻が取り壊されるという記事が出ていました…

天地明察

主人公とテーマの面白さが際立つ作品です。 江戸時代、800年ぶりの改暦を実行した渋川春海の物語。 渋川春海とその改暦事業についても、歴史教科書に1行ぐらい書いてあった気がするのですが、それがこんなにも長い年月をかけ大勢の関わった大事業とは、…

出星前夜

寡作ながら重厚な歴史小説を送り出す飯嶋和一さんが、島原の乱を題材にした大佛次郎賞受賞作。 以前紹介した「黄金旅風」に、時代も場所も続いています。 続編というわけではないのですが、前作の主人公、長崎(外町)代官・末次平左衛門も登場しています。 …

うらなり

ご存じ「坊ちゃん」のバリエーション。題名からお分かりのように、あの「うらなり君」、英語の古賀先生が主人公。 彼の目から見た「坊ちゃん」の事件と、その後のお話しです。時はあれから30年後、昭和9年の東京銀座。 「うらなり」こと古賀先生と、「山…

耶馬台

題名からも分かるように、古代日本に想を取った連作。 あとがきによると、魏志倭人伝の卑弥呼を古事記・日本書紀に出てくる倭迹迹日百襲媛(やまとととびももそひめ; 作中では鳥飛女王)、その後継者、臺与(とよ)を同じく、豊鋤入媛(とよすきいりびめ)…

始祖鳥記

「黄金旅風」を紹介した、飯島和一さんの前作。 時代は下がって、江戸は天明から文化にかけて(1785~1804)、手作りの凧で空を飛んだ男の物語。 主人公・幸吉は備前の国、児島八浜の生まれ。 海に親しみ、伊曽保物語を聞いて異国に憧れ、優れた資質…

鼓笛隊の襲来

前の「となり町戦争」では、あまり良く書かなかったのですが、ありふれた日常とあり得ない奇抜な設定の取り合わせは、やはり魅力があります。 本書は9編からなる短編集。 奇抜な着想や作者の資質は、長編より短編向きという感じです。 身も蓋もない言い方を…

黄金旅風

久々に書くのは、これまた久々に読んだ重厚な時代小説。 作者は昨年、島原の乱を題材にした「出星前夜」で大佛次郎賞を受賞。 受賞作を読みたいのですが、なかなか巡り会わず、その前日譚といってもいい本作を読んでみました。 といっても、二作に直接のつな…

のぼうの城 ~ 新しいヒーロー像登場?

戦国物も一時期よく読んでたことがあります。 最近は遠ざかってたけど、ちょっと切り口のちがうものが出て来だしたようです。 その一つがこれです。 秀吉の北条攻めの折、北条方の城の一つ武州・忍(おし)城の攻防を巡る物語。 忍城は現在の埼玉県行田市に…

鹿男あをによし

ちょっと前、テレビドラマ化されていた物。 私はドラマは見てませんが、題名が記憶に残ってました。 一読して、これも漱石の「坊ちゃん」のバリエーションだなと分かります。 語り口が似てるし、(おそらく)東京から地方の高校(ただし女子校)に赴任した若…

チーム・バチスタの栄光

「このミステリーがすごい!」大賞、映画化など前から名前は聞いていたのですが、たまたま眼について昨日読み終えたら、明日からテレビドラマ放映とのこと。 私にしては珍しくタイムリーなので、ミステリーあまり取り上げないのですが、今回は書いておきます…

「図書館戦争」シリーズ

アニメ化予定(らしい)の話題の人気シリーズ。 公序良俗に反する表現を取り締まる「メディア良化法」が施行される近未来(パラレルワールド?)。 メディア良化機関が武力を持って恣意的に表現・出版の検閲、取り締まりを行っている。 この国家機関に対し、…

カレンダーボーイ

ノスタルジック タイムトラベル小説と帯にあるように、タイムスリップと郷愁の(?)昭和ものの組み合わせ。 目新しいのは、タイムスリップしてもしばらく行きっぱなしじゃなくて1日毎に過去(1968年)と現代(2006年)を行き来することと、当事者…

陰陽師 「瘤取り晴明」

以前、長編を紹介した「陰陽師」。 これは絵本仕立ての中編ですが、このシリーズの魅力の1つを典型的に表しています。 このシリーズ、日本人なら誰でも知っている伝説、説話を下敷きにしたものが多いです。 それでいて、単なるパクリとは思わせない、 「な…

陰陽師 瀧夜叉姫

安部晴明が主人公の人気シリーズ。 大体読んでいるんですが、比較的新しい長編で紹介します。 魑魅魍魎や人間の業を扱って、おどろおどろしく残酷な描写もあるけれど、あまり抵抗なく読めて後味が悪くないのは、源博雅の存在とそのキャラクターによるところ…

となり町戦争

平凡な日常と戦争の同居という奇抜な設定が気になって、手に取ってみました。 戦争が地方自治体の公共事業という設定で、お役所の仕事を皮肉に描いている所は理解できます。 途中にちりばめられた、この地上のどこかで戦争が起こっていることを知りながら無…

魂萌え

新聞連載、映画化で話題の小説。 還暦間近のヒロインの夫が定年後急死、愛人の存在が発覚して…、というとありがちな設定ですが、それを現代の問題に絡めて描いたことが話題となった要因でしょう。 問題の愛人が主人公より年上、というのがまず意表を突く所。…

半落ち

映画化されていてちょっと興味を持ったので、手に取ってみました。 映画は見ていません。 映画の宣伝で内容はご存じの方も多いでしょう。 警察官がアルツハイマー病の妻を手にかけて自首してくるが、殺害から自首までの2日間のことは何も語らない、という物…