通い猫アルフィーの奇跡

猫が好きなので読み始めたシリーズの第1作。

ロンドンで老婦人マーガレットや先輩猫アグネスと幸せに暮らしていたオス猫アルフィーは、アグネスに続いて大切な飼い主マーガレットまで失い、寄る辺ない身の上に。
ただ一人の飼い主に運命を託す危険を知ったアルフィーは、複数の家庭を掛け持ちする通い猫として生きようと考えます。
おあつらえ向きの新しい住宅地エドガー・ロードにたどり着いたアルフィーは幾組かの飼い主候補を見つけますが、みな問題を抱えた人たち。
離婚して酒浸りのクレア、有能なビジネスマンらしいが求職中で女性とのアバンチュールに憂さ晴らしをしているジョナサン、主婦のポリーは産後鬱に苦しみ、ポーランドから来たフランチェスカとトーマス一家は望郷の念といわれのない差別に悩まされている。 彼らに寄り添い、何とか力になろうとするアルフィー

猫は自己中心で身勝手な生き物と思われがちですが、彼らは彼らなりに人間を愛し、その幸せを願っている。 猫好きな人なら、そのことは何となく感じているはず。 もちろん、それは自分の食事や安全を確保するためではあるのですが、ただそれだけではない猫からの愛情も間違いなくあると思います。

人間たちのため、特に幸せになりかけたのに再び危機に陥ったクレアのために、アルフィーは思い切った行動に出ます。 彼の行動が引き起こす奇跡はちょっとでき過ぎの感もありますが、ハートフル・ファンタジーということで、まず、良しとしましょう。

エドガー・ロードにたどり着くまでのアルフィーの苦難の旅や、その途上、またエドガー・ロードに来てから出会う猫たちとのやり取りも読み応えがあって楽しいです。
続編が期待できそうです。

 

「通い猫アルフィーの奇跡」   レイチェル・ウェルズ 作
                中西 和美 訳(ハーパーBooks)