「図書館戦争」シリーズ

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アニメ化予定(らしい)の話題の人気シリーズ。

公序良俗に反する表現を取り締まる「メディア良化法」が施行される近未来(パラレルワールド?)。 メディア良化機関が武力を持って恣意的に表現・出版の検閲、取り締まりを行っている。 
この国家機関に対し、地方機関である図書館は連合して「図書館の自由」を宣言し、図書隊を組織して防衛。 両者の間で火器を使用しての超法規的戦闘まで行われる事態になった。

主人公、笠原郁は高校生の時、好きな童話を守ろうと良化隊に抵抗した窮地を救ってくれた図書隊員にあこがれて入隊し、その情熱と170cm超の体格に抜群の体力・運動能力を買われて、精鋭である図書特殊部隊に抜擢される。
所属の班長は教育期間中の鬼教官、堂上篤(背は郁より低い)。 笑い上戸で穏やかだが正論は決して譲らない副班長の小牧幹久、郁の同期で全てに優秀だが性格は頑なな手塚光が班のメンバー。
そこに郁と寮で同室の図書館員(一般業務担当)で情報通の策士、柴崎麻子、特殊部隊長の玄田竜助も加わり、様々な事件、戦闘、家庭事情、人間関係の騒動が繰り広げられる。

全部で4作から成り、「起承転結」という構成が予想されるのですが、この作品は「起転承結」という感じ。
その3作目をたまたま手に取り、後1,4,2の順に読んだので、ちょっと落ち着かない感じでした。
けれど、3作目のアイドルタレントの記事での「床屋論争」で作者の真意はあらかじめ理解出来ました。 同じく3作目の昇任試験のエピソードでは、作者は本や図書館が本当に好きなんだなと思えて、かなり印象が良くなった面もあります。 子ども相手の読み聞かせ課題に、天然のキャラで突っ走るかと思われた郁の意外な工夫が良かったし、実直正攻法の手塚クンも良かった。

図書館と戦闘という、意表を突く突拍子もない話に見えるけど、公序良俗・人権とメディアの問題は一筋縄でいかない複雑な問題で、隠されたテーマは重いものです。
万人が納得する解決というのはあり得なくて、だからこそ自由が大切なのでしょう。
そういう作者の主張はわかる気がするのですが、その私にしても、玄田の恋人が記者をしている週刊誌が良化法と戦う一方の英雄扱いされている事には納得がいかない思いです。 作中でも指摘されているように、野放図で扇情的なメディアのあり方が良化法成立の背景にあり、現実世界でもその害は大きく、時には裏で結託して取り締まりと連動しているのでは?と勘ぐりたくなる事すら有るからです。

権力と武力を振りかざして検閲・取り締まりを行うメディア良化機関、というのは悪役としてわかりやすいけど、現実には目に見えないところで問題が進攻しているのでは?
作中にもあった書評にしても、気に入った作品を批判的に書かれれば傷つく人はいるでしょう。 
このブログも素直に褒めず、いつも一言多いので、その点は申し訳なく思います。 だからと言って良い事しか書いてはいけないのなら、出版社や書店の宣伝の焼き直しに過ぎない物になって、利害関係も他の表現手段も持たない一読者がわざわざ書く意義もないでしょう。 読んでくださっている方は理解しておられると思いますが、批評と非難は別ものです。

作中の書評(と言うより本の悪口)を巡る事件では、図書館として行われたのが問題で、個人的になら構わないのだと何度も強調されています。
しかし、これを読んで拡大解釈し、自己検閲・自己規制してしまう人も結構多いのではという気がします。 そうでなくても、マスコミで大々的に宣伝している物に個人が疑問、異義を表明するのは難しい面があります。
それは本に限った事ではありません。
そのような、心の検閲、自主規制こそが本当は問題だと思うのですが。

図書館戦争
「図書館内乱」
「図書館危機」
「図書館革命」 有川浩作 徒花スクモ絵 (メディアワークス