半落ち

映画化されていてちょっと興味を持ったので、手に取ってみました。 映画は見ていません。

映画の宣伝で内容はご存じの方も多いでしょう。 警察官がアルツハイマー病の妻を手にかけて自首してくるが、殺害から自首までの2日間のことは何も語らない、という物。

その空白の2日間に何があったか、取り調べ、報道、裁判、収監という時間の流れに沿って、刑事、検事、新聞記者、判事、看守がそれぞれの立場で関わっていくという構成はうまいと思います。
警察、検察、報道の内幕や互いの軋轢も、そういう物かなと思える。
最後に2日目の秘密が明かされ、主人公のヒューマンな側面が明らかになり、その点ではすっきりします。

でも、そのヒューマンで優しい主人公が、なぜ妻を殺してしまうのか?
それが優しさと、登場人物の一人が言うけど、私には納得できません。
昨年亡くなった私の父も最後の数年は認知症(痴呆)で、介護の大変さ、本人の苦痛は解らないではありません。 ですが、痴呆になったら全てがお終いなのでしょうか? 生きている意味が無いのでしょうか?
主人公の妻は、まだ若く、病気の進行も速いということになっていますが、初期には病気を恐れ、拒むが、やがて受け入れて折り合いをつけていける人も少なくないのです。 主人公も警察官といっても、勤務が不規則でもない警察学校の教官。 それなのに、介護やカウンセリングなどに努力した様子もなく、本人が望んだからといって殺害してしまうのは、分別ありげな主人公にしては短絡的に感じました。

懸命に病気と闘い、また介護している、患者さんや家族に失礼では?と思います。

半落ち」 横山秀夫講談社