たのしい川べ

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以前取り上げた「川の光」の作者、松浦寿輝さんのインタビューを読みました。
 
その中に、着想のヒントとなった物として、この「たのしい川べ」が挙げられていました。

本文で触れた、「床下の小人たち」や「ガンバの冒険」の方が似ていると思うけど、そういえば、図書館ネズミのグレンは「たのしい川べ」的キャラかも。
そうそう、これがあったんですね。 私も子どもの頃、大好きだったお話しです。 なんだか、懐かしい友達に巡り会ったような気がします。

古き良き時代のイギリスはテムズ川を舞台に、純情で気の良いモグラ、真面目でやさしい川ネズミ、無口で怖いようだけど頼りになるアナグマ、そして気まぐれでお調子者だけど憎めないヒキガエル達が活躍するお話しです。
一話完結の短いエピソードが多いのですが、自動車に夢中になったヒキガエルが町に繰り出して騒動を引き起こす話は、少し長めの一連のストーリーになっており、ここだけ独立させて「ヒキガエルの冒険」とした物もあったようです。

最初の方は擬人化された動物たちの穏やかなほのぼのストーリーで、ヒキガエルの冒険の下りは、人間の町に出てのドタバタ騒ぎなのですが、ここまで読んでくると動物たちに感情移入しているので、不思議と違和感を覚えません。
それが「川の光」のところで述べた、「物語の力」だろうと思います。

子ども向きとしましたが、実際には子どもには難しいような哲学的な所もあります。 けれど、決して、子どもを混乱させたり不安にする事はないでしょう。 そして、大人が読んでも味わい深いはずです。

個性豊かな動物たちとそのエピソード、読者によって好きなキャラやストーリーがあると思いますが、私は、久方ぶりに我が家に帰ったモグラが川ネズミと共にクリスマスを迎える話が好きです。
本当のクリスマスって、こういうものだろうなと思わされます。


「たのしい川べ」 ケネス・グレーアム作 石井桃子他訳 (岩波書店