山嶽党奇談

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前にご紹介した、鞍馬天狗「角兵衛獅子」 の続編で、やはり少年倶楽部に連載された物。

勤王と佐幕の戦いで血なまぐさい京の町に、この度は、主義主張に関係なく金さえ貰えば暗殺を請け負うという、山嶽党なる秘密結社が現れます。
鞍馬天狗にも誘いをかけてきますが、言うことを聞かぬと見るや杉作少年を人質に脅迫してくる悪どさ。
もとより鞍馬天狗の人間愛とは対極の「人道の敵」。 鞍馬天狗は敢然と戦いを挑み、杉作少年、黒姫の吉兵衛もこれを助けて、何度も危機に陥りながら戦い続けます。

この山嶽党の組織が不気味で謎に満ちている。 秘密結社というのも少年物の定番みたいですね。
前作に比べると、謎解きサスペンスとホラー味が加わっている感じ。 
ただ、謎解きが主眼ではなく、また杉作少年の視点が中心になっているので、組織と首領の正体は最後に鞍馬天狗の口から語られるだけで、そこに到る彼の活動には触れられていないのが、今読み返すと少し物足りなく感じました。
この作品で注目したいのは、珍しく、鞍馬天狗の子ども時代の思い出が語られていること。 彼の出自の手掛かりになるような物ではないのですが、他では見られないので、貴重な情報という感じです。

今回は文芸春秋鞍馬天狗傑作選で読みましたが、小学館文庫もにもあるはず。

少年倶楽部は掲載号の表紙絵。 「鞍馬天狗読本」 にも掲載されていましたが、画家は斎藤五百枝。 でも、この絵、私には鞍馬天狗と言うより、桂小五郎月形半平太のイメージなんですが…。 「ー読本」に掲載の同画家の素描の方は良かったですが。
おなじく「ー読本」掲載の佐多芳郎氏の本作の挿絵が素晴らしく格好良かった。 佐多氏の挿絵はシンプルで洗練されていて、私は一番好きですね。


「山嶽党奇談」  大佛次郎作(文芸春秋 鞍馬天狗傑作選2)