日本語ぽこりぽこり

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著者は1967年、米国ミシガン州生まれの詩人。
日本語で詩を書くというから驚き。
題名からも、そんな日本語に堪能な外国人の日本語や日本に関するエッセイと思ったら、ちょっと違うかな? 一部はそういう話もあるのですが、もっと範囲が広い。

それにしてもこの人の言葉に関する知識、学習意欲には頭が下がります。
二千円札裏の源氏物語絵巻の絵と詞書きがチグハグで、しかも詞書きは途中でちょん切られてズタズタなんて、恥ずかしながら全く知りませんでした。 読んでみようかと思ったこともあるけど、二千円札は滅多に見ないし、おつりなどで受け取った時も千円札と間違って使うとヤだから、出来るだけ早く使うようにしているので、あまりしげしげと見たことがありません。
津軽弁なんてのも私にはよく分からないし、題名の「ぽこり ぽこり」も漱石の俳句から来ている。
外国の人にここまでやられると、日本人として肩身が狭いのですが。

でも、読んでいて面白い、ためになると思えるのは、英語に関する話。
英語で”hibachi”というのは「しちりん(七厘)」のことだとか、擬音語や「おまけ」の訳語をどうするかなど。
歴史、社会に関する話も発想、観点が少し違っていて面白い。
鉄道線路の軌道の幅は馬車、つまり馬のお尻の幅から来ていて、それが宇宙船にまで受け継がれている、というのは西洋文明の伝統を物語っています。
「アポロ宇宙船の月着陸はインチキ」という話は私も読んだことがあります。

怖いのは「ハロウィンの恐怖」。
「ハロウィンに毒入り菓子がばら撒かれた」という話は私も聞いたことがあったけど、本当に怖いのはそのことではなく、それが全く根拠のないデマだったこと。 それなのに全米に広まりハロウィンの様相を変えてしまった。 その背景にあるのは何なのか? それは日頃気になる、日本の社会の現状とも通じる気がします。
その問題を論じた本は邦訳(「アメリカは恐怖に踊る」バリー・グラスナー 草思社)も出ているようなので、手に入れば読んでみたいと思います。

この本のエッセイの多くは小学館のホームページ「Web日本語」に連載された物だそうで、私はまだ見たこと無いですが、そのうち覗いてみたいと思ってます。


「日本語 ぽこり ぽこり」 アーサー・ビナード著 (小学館)