モチモチの木

イメージ 1

もう古典的名作と言っていい、斉藤隆介、滝平次郎コンビの切り絵絵本。
中でも一番好きなのが、「モチモチの木」です。
「花さき山」より教訓臭が少ないのが良いと思っています。

峠の猟師小屋に、じ(爺)さまと二人きりで暮らす豆太は臆病な甘えん坊。 5つにもなって夜一人でセッチン(トイレ)にも行けず、じさまに付いて来てもらうほど。 もっともセッチンは家の外にあって、外には大きなモチモチの木がオバケのような枝を広げているのですから。
モチモチの木とはトチの木のことで、その実からトチ餅が出来るので豆太が付けた名前です。

そのモチモチの木に、シモ(霜)月二十日のウシミツ(真夜中)に灯がともると、じさまは言います。
それは山の神様のお祭りで、勇気のある一人の子どもだけが見ることが出来るとも。
じさまも死んだおとゥも見たという、モチモチの木の灯りを豆太も見たいのは山々ですが、臆病な自分にはとても無理と、はなから諦めています。

ところがその晩、じさまが腹痛をおこして苦しみ出します。
「イシャサマオ、ヨバナクッチャ!」
怖いのも寒いのも我慢して、豆太は泣き泣き裸足でふもとの村に走ります。
医者様に背負われて小屋に戻った豆太が見た物は…

この絵本は「花さき山」に比べると地味な色合いで、峠の小屋で二人きりの暮らしの寂しさを表しているようです。 豆太が甘えん坊なのも、その寂しさから来るのかもと、今、読み直して思えます。
だからこそ、モチモチの木の灯りの、色とりどりの夢のような美しさが引き立っています。
もう一か所、明るく暖かい色合いで描かれているのが最後のペ-ジ。 じさまが元気になると、豆太はまたションベンにじさまを起こした、という記述と共に、ホッとするものを感じます。


「モチモチの木」  斉藤隆介作 滝平次郎絵 (岩崎書店)