グリフィンの年

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以前紹介した「ダークホルムの闇の君」の続編に当たる魔法ファンタジー
http://blogs.yahoo.co.jp/myrte2005/18714342.html

前作から8年。 チェズニー巡礼観光会からは解放されたものの、魔法世界はまだ復興途上。 本当に戦争状態になってしまった国々も。
とりわけ魔法大学は困窮しています。
高齢の教官達は引退し、総長ケリーダも魔法界の復興に専念するのを口実に、若手教官の運営委員会に権限を丸投げしてセミリタイア。 
経済的にはジリ貧状態です。

そんな中、ダーク家のグリフィンの娘、エルダが入学します。
このグリフィンの数が多くて判別が付きにくかったんですが、前作では末っ子に当たるらしい。 本作ではさらに弟妹が各一人いるようで、「もう、どうでもしてください」という感じ。

そのエルダの5人の学友は、魔法界各地の出身らしいが、魔法を習っている事や居場所が知れるとまずいという理由あり揃い。
エルダ自身も「父親」ダークに入学を反対されていたのですが、最後は折れてくれたようです。
それでもダークは様子を見がてら差し入れを持ってきた時、学友達相手に大学批判をぶち挙げ、古典魔法書で自主学習するよう扇動します。
この自主学習がそれなりの成果を上げるのですが、同時に混乱を増やす元にもなります。
でも本作のダーク、出番は少ないですが、家庭と趣味以外には無関心・マイペースだった前作に比べると、ちょっと頼もしくなって頑張ってくれてます。

ストーリーに戻ると、財政が苦しい大学運営委員会は新入生の保護者達に寄付を募る手紙を送りつけます。 エルダの学友達はそれで居場所や魔法を習っている事がばれてしまって、さあ大変。
学生と教官のドタバタ騒ぎに加えて、刺客は侵入、海賊は乱入、帝国の元老やドワーフの鍛冶元や別大陸のグリフィンも現れ、果ては帝国、王国、首長国それぞれの長が軍を率いて乗り込んでくる大騒動。
エルダの家族も応援に駆けつけます。
物語も読者の頭も混乱を極める終幕、パタパタパタと全てを治めてみせる手際はさすがです。
「グリフィンの年(原題直訳)」という題名の意味も最後にわかります。

始めは端役にしか見えなかったフリューリィという、へこへこしたキャラのグリフィンが、次第に存在感と重要度を増してくる過程が、私には面白かったです。


「グリフィンの年 上・下」 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作 浅羽莢子訳(東京創元社