はてしない物語 ~ ファンタジー、つい夢中になるけれど

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ファンタジー好きです。

読書の楽しみは、知らなかったことを知ること、日常出来ないことを体験する(あたかも体験したように感じる)こと、別の世界をかいま見ること。 それならファンタジ-が一番。

でも困るのは、その世界に入り込んでしまって日常に戻れなくなること。
どんな本でも夢中になって読むと、そういうことは起こるけど、日常とかけ離れた異世界が舞台のファンタジーだと、一層その落差が激しい。 読書だけじゃなくて、ゲームなんかでも起こることですが。

その問題に正面から取り組んでいるのが、ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」。

もちろん、ただそれだけの話ではありません。
気弱な少年、バスチアンが物語の中に入り込んで物語の国ファンタージエンを虚無から救う、という前半だけでも、独立した立派なファンタジーなのですが(映画化された時、1作目はここで終わっていましたね)、この物語の眼目はやはり後半の、ファンタージエンからの帰還にあると思います。

ファンタージエンで1つ望みを叶えるたびに、現実の世界のことを忘れていく。 全てを忘れて、元の世界に戻れなくなった人たちが住む、「元帝王たちの都」の描写にはゾッとします。
それは架空の物語やゲームにはまって、現実を疎かにしている人間をデフォルメしているんだろうなと。
それがお説教じみずに物語の一部となっているのは、前後の物語全体の構成や、細部の描写がしっかりしているからでしょうね。
この部分があるから、最後のバスチアンの苦闘もいっそう説得力を持ちます。

本を読むのは楽しいけど、普段の生活も大切に。
私のような本の虫は、心がけておかねば。

はてしない物語」 ミヒャエル・エンデ作 上田真而子佐藤真理子訳(岩波書店)