日本人はなぜ狐を信仰するのか

だいぶ長く書いていませんでしたが、その間も本は読んでいて、書きたい物も溜まっています。
その最新の物、昨日読み終えたのがこれ。

著者の松村潔さんは、本の紹介では西欧神秘哲学研究家となっているけど、占星学つまり星占いでよく名前を聞く方です。

ファンタジー好きの私は、占いや不思議話も結構好きです。
でも、信じてるかというと、そこは微妙です。
雑誌やネットの占いもチェックするのは週1回かそこら。 良い事が書いてあれば嬉しいし、悪くても、例えば金運なら「衝動買いに注意しよう」と思うくらい。 だいたい1時間もすれば忘れてるので、当たったかどうかあまり気にした事もありません。 まあ、その程度です。

その程度の私でも名前を知ってるんだから、松村さん、この世界では有名な方ですね。
その有名占星術師、もとい、西欧神秘哲学研究家がなぜ日本の狐、つまり「お稲荷さん」を取りあげるのか?
それがこの本を読んでみた理由です。

読んでみて感じるのは、失礼な言い方かも知れませんが、意外にも冷静で学問的な書き方。
宗教、オカルト、スピリチュアルな物にありがちな断定的な物言いや強引な解釈をほとんど感じず、安心して読み進められます。
引用などもきちんとしている感じで、タレント的な大学教授の著書より、むしろしっかりしてるんじゃないかと思いました。

内容は、前半が稲荷信仰を日本神話(神道)や民俗学、仏教などとの関連で分析した物、最後の2章で、著者の本領である西欧神秘学や古代エジプトとの関連を論じています。

著者の得意分野から言って、後半の方に眼目があると思うのですが、日本人には馴染みの薄い分野であり紙数制限もあってか、ちょっと説明の足りなさを感じました。
ただ、あまり後半に力を入れると、「日本人と狐」という表題から離れてしまいそうです。
でも古代エジプトカバラユダヤ神秘思想の一派)と稲荷信仰の関連というのは、着眼として面白いと思います。
突飛な組み合わせのように感じるかも知れませんが、古代の神話などは、地理的・民族的に大きな隔たりがあるのに多くの共通点が見られる物は珍しくありません。
また、この本でも触れているように、古代には日本とギリシャ・ローマはシルクロードを経て結びつき、ギリシャ・ローマとエジプトは地中海を介して交流があった事を考えると、あながち突飛とも言えないでしょう。

この問題、さらに研究を深めていくと面白そうです。


「日本人はなぜ狐を信仰するのか」 松村潔 著(講談社現代新書