幽霊派遣会社

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幽霊を派遣するって、一体?
どんな幽霊をどこに派遣するんでしょう?

歯科医のウィルキンソン一家の事情を見てみましょう。
一家は第2次大戦中の空襲で幽霊になってしまいました。 ペットのセキセイインコまで一家揃ってーと、言いたいところですが、なぜか奥さんの妹のトリクシーだけは見あたりません。
人の良い一家は、ビクトリア朝の幽霊らしいアディ(仮の名)という記憶喪失の女の子を見つけ、一緒にロンドンにやってきます。 住む場所とトリクシーを探すためです。
ところがロンドンは幽霊でいっぱい。 一家は下着屋に住み着きますが、生活は不自由です。

そんなときアディが幽霊派遣会社の看板を見つけます。 夜間学校の同級生である二人の魔女が、行き場のない幽霊を、家に引き取ってくれる人間に斡旋しているのです。
喜んで派遣会社に登録する一家。

ウィルキンソン一家やその友人はとてもいい人達で、こんな幽霊ならちっとも怖くないのですが、ホラー映画に出て来そうな怖い幽霊もいるのです。
それがシュリーカー夫妻。 元は立派な貴族なのに、姿が血まみれで恐ろしいだけでなく、凶暴で子どもをいじめるのが大好きという邪悪さ。 彼らも、身分にふさわしい住まいを求めて派遣会社に登録しています。 (夫妻の本名はペラム・ド・ボーン卿とレディ・サブリーナで、本来ならド・ボーン夫妻と呼ぶべきなのですが、なぜシュリーカーというのか説明がありません。 たぶんあだ名でしょうが、叫ぶ/金切り声を上げるという意味のshriekから来ているのでしょうか? 子どもには分かり難いので説明するか、あだ名と解る書き方をして欲しいところです)。

そのうちウィルキンソン一家は古い修道院へ、シュリーカー夫妻は北イングランドにあるヘルトン館という古い屋敷に移住が決まります。

ところが、ヘルトン館の方は訳ありで、代々の主人が変死した後、孤児のオリヴァー少年が跡継ぎとして迎えられたばかりだったのです。 オリヴァーのいとこのフルトン、フリーダ兄妹は、オリヴァーを脅して屋敷を乗っ取ろうと、恐ろしげな幽霊を手配したのです。

そして、派遣会社の事務員が2組の幽霊の行き先を取り違えたことから、思わぬ展開になっていきます。

「思わぬ…」といっても、フルトンらの目論見とは違うという意味で、登場人物が出そろったあたりで話の展開は見えてくるのですが、そこは細かいこと言わずにストーリーを楽しみましょう。
オリヴァー少年にも幽霊達にも危機が訪れますが、最後にはハッピーエンドを迎えます。

ところでトリクシーはどうなったの?
残念ながら最後まで解りません。 死んだ人がみんな幽霊になるわけでもなさそうですが、なぜなのか? そもそも幽霊ってどういうもの?
それは、オリヴァーが建てた研究所でそのうち解明されるかも知れません。


「幽霊派遣会社」 エヴァ・イボットソン作 三辺律子訳 (偕成社