「世界征服」は可能か? ~ 「気ままに読書日記」は悪のブログか?

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「ところで、このガーゴイルって秘密結社は、なんで世界征服なんかしたいんでしょうね?」
「そんな面倒なことせずに、高度な科学力で自分らだけ楽しい暮らしすればいいのに…」

何気なく手に取って開いた冒頭の言葉に、思わず、
「ほんと、何でだろ?」
即、借りて読みました。

これは庵野秀明さんが、アニメ「ふしぎの海のナディア」の監督をしていた時の言葉。 ガーゴイルは敵役ネオ・アトランティスの首領の名、企画段階では組織名だったそうです。

言われるまで、私は特に疑問を持ってませんでした。 悪の組織ってそんなモンだろ、ぐらいで。
世界征服を目指すわりには、やることがせこい(幼稚園バスを襲うとか)けど、そんなんでいいのかな?ぐらいは思ってましたが。
なぜ悪の組織は世界征服をしたがるのか? 作る側の人もよく解ってなかったんですね。
で、作る側の岡田斗司夫さんが、「世界征服」とは何か? その手順と征服後の問題点は? 「支配」とは、「悪」とはなにか? 徹底分析(?)したのが本書です。

とにかく笑える。 一気に読めました。

著者はオタクの権威だけあって、例にはマイナーでよく知らない物もありますが、読む上で特に問題を感じません。
バビル2世」はアニメの主題歌だけ聞き覚えていたけど、敵の首領・ヨミ様って、こんなに気の毒な人だったんですね。 しかも渋い!
それなのに、「ヨミさま人生すごろく」見て、大笑いしてしまいました。 ヨミ様ごめんなさい。

笑いながら読んでいて、最後の章「世界征服は可能か?」にきて、意外に真面目に考えさせられました。
アメリカ合衆国古代ローマ帝国の、制度と歴史の比較なんか、「ふーん」と感心しましたね。

それで結論、「これが世界征服だ」ですけど、今の「大衆文化」の世界では、世界征服にはうまみがない、自分だけ豊かで他人から搾取するなんて不可能ということです。
そして「悪」とは「その時代の価値・秩序基準を破壊するもの」だそうです。
人々の幸福を破壊するのが「悪」なら、幸福感は「その時代の価値観」で決まるから、「その時代の価値観=幸福感」にダメージを与える行いや言論こそが「悪」なんだそうです。

そうすると、現代日本の読書界では、
「トレンドに敏感になって、流行の本はすぐ買って読もう」そして「マスコミやみんなが褒める物は(出版社や書店の思惑に)素直に感動しよう」という価値・秩序基準になってますから、
このブログのように、
「流行なんか気にせず、お金を使わず図書館で手に入る物を適当に読もう」
「マスコミや他人が何と言っても、自分が感じるまま好きなように読もう」
というのは、十分に「悪」と言えるじゃないですか!?

まあ、この更新ペースと閲覧数では、「世界征服」は程遠いですが。


「『世界征服』は可能か?」 岡田斗司夫著 (ちくまプリマー新書